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知っていますか? 平成18年度税制改正で大増税!?

  平成18年度税制改正大綱で、中小企業の大半を占める同族会社に対して役員報酬の一部を損金不算入にしようとする大改正が盛り込まれています。なぜかマスコミなどではあまり取り上げられないのですが、中小企業にとっては大増税になる危険性があります。
 以下にその平成18年度税制改正大綱の抜粋を記載します。

 「同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が発行済株式の総数の90%以上の数の株式を有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合等には、当該業務を主宰する役員に対して支給する給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金の額に算入しない。ただし、当該同族会社の所得等の金額(所得の金額と所得の金額の計算上損金の額に算入された当該給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度における平均額が年800万円以下である場合及び当該平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下である場合は、本措置の適用を除外する。」

 つまり、同族会社を支配するオーナーに支払う役員報酬のうち、給与所得控除額に相当する金額は、利益に加算したところで税額計算をするというものです。分かりやすいように実際の数字で考えてみると、

 役員報酬額  600万円 で、給与所得控除額 174万円
 役員報酬額  1000万円 で、給与所得控除額 220万円
 役員報酬額  2000万円 で、給与所得控除額 270万円

となり、この給与所得控除額を会社の当期所得金額に加算して税額を計算するのです。税率40%だとするといったいいくらの増税になるのでしょうか。
 一定の規模に対しては適用除外とはいえ、私の顧問先を考えても相当数の割合でこの規定が適用され、相当の負担増になってしまいます。財務省では増税になるのは全国で5~6万社、増税規模は300億円程度と予想していますが、そんな規模ではないはずです。

 この改正は今年5月施行の新会社法で会社設立が一段と容易になるため、個人事業主が節税目的のみで法人設立をすることへの対抗手段と考えられますが、そもそもは給与所得控除額自体の見直しを図りたかったがサラリーマン増税として給与所得者から大反対にあったため、こんな稚拙な手段をとることになったのではないかと思われます。

 給与所得控除額はあくまで所得税法の話であり、その額が法人税で課税所得を構成するという理論が成り立つはずがないのです。給与所得控除額は私自身も所得控除額として過大であると思います。早急に見直す必要があると思います。税制調査会はあるべき税制の構築に向けて勇気を持って対処してほしいと思います。こんな改正が簡単に行われてしまうような魅力のない日本にしてほしくありません。我々税理士が身近に接している中小企業経営者の実態をもっと理解したうえで考えるべきです。


 私が所属する神奈川青年税理士クラブでも、「役員報酬の損金不算入制度規定創設に対する意見書」を表明しておりますので、以下にその抜粋を掲載します。


 去る12月15日に平成18年度自由民主党税制改正大綱において「特定の同族会社の役員報酬に対する損金算入制限規定」に関する記述がありました。
規定の趣旨、内容がまったく不可解、かつ我が国中小企業の大半を占めるであろう同族会社にとって多大な影響を与える「役員報酬の損金算入制限規定創設」に対して当クラブは強く反対します。

1.まず、増税ありき。損金不算入の理由が全く不明です。

 税収が不足しているから増税という論理が先に来ており、給与所得控除額がなぜ損金不算入となるのかその趣旨、理由が全く不明です。給与所得控除はいわば給与所得者の概算経費部分等と一般的に解されています。このことを無視して課税がなされるということは、個人と法人を一体として捉えた課税手法であり、法秩序の安定を揺るがしかねないものとなっています。

2.担税力をまったく無視しています。

 法人は役員報酬全額を支出するのであり、その一部が損金とならずに法人税課税を受けるということは担税力がまったくない事象に対する課税です。このことは法人の内部留保の強制的流出を意味し、法人の所得に対して課税するという大原則を無視した規定となっています。
 交際費課税も同様の手法ですが、冗費節約という大義名分があることに対し、本規定はまったく趣旨が不明で、法律の方向性が認められません。
 また、留保金課税の留保控除額の拡大と引き換えに本規定を創設することは両者にまったく因果関係がなく、税制度の中での調整、帳尻合わせ以外の何ものでもありません。

3.経営者の企業努力や成果をまったく無視しています。
 
 経営者は何とか利益を獲得しようと各種経営資源を活用し日々努力しています。本規定はただし書きでより脆弱な経営基盤の経営体に対しては適用除外規定を設けているものの、より高い収益を上げ、より高い役員報酬を支払うことができる企業体に必要以上の税負担を強いるものです。企業努力や経営者の努力で獲得した利益がまったく理由なく税徴収される理不尽なものとなっています。
 また、キャッシュフロー経営を中心とする動きの中で経営者は企業利益が現金として社内に残るよう努力しています。本規定は法人の所得計算にまったく関係のない事象を損金不算入とするもので、経営者の企業努力はまったく無視されたものになっています。経営者は中期的、長期的経営計画のもとで熟慮の結果役員報酬を決定しています。本規定は経営者の経営上の管理統制がまったく不可能な課税制度であり、起業意欲にも影響を与えるものと考えます。

4.規定創設について事前の議論がまったくなされていません。
 
 本規定は突然浮上した、いわば「寝耳に水」の規定で、十分に事前の協議がなされたとは考えられません。このような拙速な規定の創設は税制に対する納税者の予見可能性を廃するもので、国民感情をまったく配慮しておらず到底受け入れることはできません。

5.法人税法の法理をまったく無視した珍妙な規定です。

 法人税法においては役員報酬は過大部分を除き損金に算入すべきものと規定されています。また費用の額は一般に公正妥当と認められる会計処理基準に従って計算されるものとされています。
 本規定は法人税法の趣旨、計算基準をまったく逸脱した珍妙な規定で、給与所得控除額がなぜ法人の所得計算に関係し、何ゆえ損金とされないのかまったく不明です。
 同族会社の役員報酬は交際費と同様の扱いなのでしょうか。